[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
暴風。
それはまさしく暴れる風だった。
叩きつけるように吹き抜ける風に体を浚われそうになる。
長い髪は翻弄され、一時もじっとしていない。
(花を散らす嵐…か……本格的に桜が咲く前でよかったな)
もし咲いていれば、散ってしまっていた。
けれどまだ、大丈夫。
もしかしたら蕾はいくらか落ちてしまうかもしれないが…
暴風に晒された我が家を見やる。
家すら揺れるほど、風が強い。
(守りたいな)
この家を。
そこで眠る二人を。
1人は親友。
こんな私と一緒に走り回ってくれる友。
お互いに暴走しがちで、だけどお互いに支えあって何とかやっている。
もう1人は恋人。
こんな私と一緒に歩いてくれる愛しい人。
私を誰よりも強く、あるいは誰よりも弱くさせる…ただ1人の。
この二人を守りたい。
いや、この二人だけじゃない。
目を閉じれば浮かぶのは、大切な友人たち。
みんなが私に影響を与えてくれる。
それらはきらめく宝石のように、この心を照らす。
魅了する。
考えてみれば、なんていう奇跡の積み重ねなのだろう。
最初からきっと…ずっと…
あの日のことを思い出す。
この大陸にたどり着いたとき、私は何も持っていなかった。
経験も、知識も、記憶と共に吹き飛んでいた。
何も知らない場所で、国のサポートを頼って、なんとか生活をし始めた。
楽しいこともあった。
けれど悲しいこともあった。
友人は何人かできたけど、目標はもてなかった。
どうしたらいいかもわからず、ぼんやりとただ生きていて。
変わり映えのない世界…そう思った…思い込んでしまった日常。
そんな生活にやがて疲れてしまって。
1年もの間、眠り続けて。
何度か。
夢が友の声を運んできた。
何度目かの時、私は目覚めた。
ゆっくりと、生活ペースを取り戻していったある日。
ひとつの出会いが、私の道を大きく変えたのだ、と思う。
そこには、私が忘れていた情熱を持った人がいた。
特別なことは何もなかった、と思う。
誘われたから、遊びに行っただけ。
すぐに戻るつもりだった。
なのに。
その国は動いていた。
代わり映えのないと思っていた世界を、その国は裏切っていた。
たった1人の、努力の結果で。
1人だけで、流れを変えたという現実に、ひどく感動したのを覚えている。
変わり映えしないんじゃないんだ。
変えようとしなかったら、そのままだっただけなんだ。
それをその人は教えてくれた。
動くことを放棄していた自分。
あきらめていた自分。
再び動くのは怖かった。
自分のためには、きっとずっと動けないままでいただろう。
それだけの勇気なんて持てないまま、日々をすごしただろう。
だけど。
頑張ってるのを見て…こんな人になら、協力したいと思った。
その人の元でならば、もう一度動きたいと思った。
それが、きっかけ。
(こんな私でも、誰かのために動けるならば)
そう。
自分が動く理由はそれがいいと思った。
そうやって、やっと動き始めて。
足りない知識に困ることは多くあったけれど、不足している知識を補ってくれる人と出会えた。
必要不可欠な苦手分野で途方にくれたときは、それを得意とする親友が助けに来てくれて、支えてくれた。
壁にぶち当たったときには、倒れないように支えてくれる人たちに出会えた。
そばにいたいと、隣を歩きたいと思える人にもめぐり合えた。
まるで、奇跡か何かのように、いろんな出会いを繰り返して
(だから、私は……)
風の中、しっかりと顔を上げて。
うつむかずに前を見る。
不安がないといえば嘘になる。
それでも今、この瞬間は。
はっきりと断言できるほどに…幸せだ。
すべてを吹き飛ばすような嵐の夜だというのに。
約束なんかはしちゃいないよ
希望だけ立ち上る だからそれに向かって
荒野を走れ 傷ついても
心臓破りの丘を越えよう
飛べるだけ飛ぼう 地面蹴りつけて
心開ける人よ 行こう
人間なんて誰だってとても普通で
出逢いはどれだって特別だろう
(異界音楽 RUNより抜粋)
03 | 2024/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 |